living.12

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「産まれたての赤ちゃん見るの初めて?」 「ハイ、初めてです」 「ソレは楽しみね」 ソレを言う月海さんが一番楽しそうだよ。 もう会ってるんじゃないのかな? 病室前だろう、誰かと話してるあげはさんの後ろ姿を発見。 相手は男のヒトで楽しそう、ではない? あげはさんって、どこに行っても誰に対しても態度が変わらないんだな。 初めて会った時のアレは貴重な姿だったみたい。 「あげは」 「アレ?なんで後ろから来るの?」 「あんた達を入口で待ってたのよ」 どうやらあげはさんは月海さんに気づいていなかったよう。 あんなに目立つ場所で立っていたのに、気づかないってスゴいよ。 「それはどーも失礼」 片手を上げて悪びれた様子もなく謝っているけれど、そんな態度を月海さんは気にしていない。 たぶん、気にしてたら友達なんてやってられないだろう。 「七夕には会った?」 「赤ちゃんのとこ行ってるって、今藍河さんに聞いた」 「…いたの、藍河」 「俺、ずっと一緒にいたよね?」 聞いたことある名前だと思った、このヒト、七夕さんのダンナさんなんだ。 確か、月海さんのお兄さん。 「こっちよ」 そこに初めからいないかのような華麗な月海さんのムシ。 なんか、さっきまでの俺のよう。 イヤ、まだあげはさん俺に向かって一言も発してないけど。 でもたぶん、存在すらムシされるよりはマシな方、かな? 何も話してくれないけど、ここまで一緒に来たし。 「雷、来ないの?」 アレ?機嫌直ってる? 声かけてくれたし、ちょっぴり笑顔だ。 「置いて行かないでください」 慌ててついて行きながら疑問に思う。 この数分で何があって機嫌が直ったのか。 さっぱりわからない。
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