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「着付けしてもらった時、帯をキツくしめられたのよ。しかめっ面してたし、着付けしてくれたヒトもあげはの機嫌の悪さが怖くて、キツいとか聞けなかったんでしょうね」
ニコニコと笑う北原母は、苦しそうに寝る彼女の頭をペシっと叩く。
俺のせいじゃ…まぁ、半分は俺のせいだけど。
とりあえず、ホッとした……のか?
母さんが帯に手をやるのを見て、なんとなく目を逸らす。
っていうか、氷水、頼んでくれてない…
「……氷水、もらって来ます」
「あら、いらないわよ?」
イヤ、いらないと言われても…
ホントにただの帯の締めすぎというだけで倒れるのか。
「ですが…」
「帯緩めれば大丈夫」
えー?ホントにそれだけで?
わからなくて首を傾げると、キレイな笑顔でクスクスと笑われる。
きっと、彼女も笑えばこんな感じなんだろうな。
ぎこちない笑顔は見たけれど。
ホントの笑顔を見たいと、少し思った。
まだ出会って一時間も経ってないのに。
こんなことを思うなんて初めてかもしれない。
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