living.12

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七夕さんの笑顔につられて次の約束をしていれば、めんどくさそうなため息混じりのあげはさんの声。 きっと会話に加わることすらめんどくさくなったんだろう。 ジーッと赤ちゃんを見始めた。 その横で男のヒトが食い入るように見ている。 あいが、さん…だっけ? いつの間にそこにいたんだろう。 しかも、誰も藍河さんにいっさい触れない。 奥さんである七夕さんでさえも。 ……このヒトの扱いって恐ろしいほどに雑というか…… うん、なんか俺ってまだマシな方なんだって、救われたような気分。 「カワイイですね?」 あげはさんの横に立って笑顔で声をかけるけれど、チラッとこっちを見る目は不審の目。 あー、さっきあんなこと言ったからなぁ。 いつも通り、スルーしてくれて構わないんだけど。 あげはさんの友達の前で言っちゃったからムリか。 気にしてないと思ったのに。 「……あげはさんが誰かの子供を産んだら教えてね?」 誰にも聞こえないように耳元で小さく言えば、今度は不思議そうな目を向けてくる。 きっと、相手は俺じゃない気がするんだ。 俺だったらいいなとは思うけど、言わない…言えない。 冗談混じりに言えたとしても、ホンキでなんて言えないことだってある。 あげはさんにとって、俺はただの同居人だから。 言葉の中に伝わってほしいと、少しだけホンキを混ぜて。 きっと、どこかで気づいてくれる。 そんな望みを少し出して。 高望み?イヤ、何も望んじゃいけない。 何かを望んでしまえば、脆く崩れてしまう…そんな関係なんだ。
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