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七夕さんの笑顔につられて次の約束をしていれば、めんどくさそうなため息混じりのあげはさんの声。
きっと会話に加わることすらめんどくさくなったんだろう。
ジーッと赤ちゃんを見始めた。
その横で男のヒトが食い入るように見ている。
あいが、さん…だっけ?
いつの間にそこにいたんだろう。
しかも、誰も藍河さんにいっさい触れない。
奥さんである七夕さんでさえも。
……このヒトの扱いって恐ろしいほどに雑というか……
うん、なんか俺ってまだマシな方なんだって、救われたような気分。
「カワイイですね?」
あげはさんの横に立って笑顔で声をかけるけれど、チラッとこっちを見る目は不審の目。
あー、さっきあんなこと言ったからなぁ。
いつも通り、スルーしてくれて構わないんだけど。
あげはさんの友達の前で言っちゃったからムリか。
気にしてないと思ったのに。
「……あげはさんが誰かの子供を産んだら教えてね?」
誰にも聞こえないように耳元で小さく言えば、今度は不思議そうな目を向けてくる。
きっと、相手は俺じゃない気がするんだ。
俺だったらいいなとは思うけど、言わない…言えない。
冗談混じりに言えたとしても、ホンキでなんて言えないことだってある。
あげはさんにとって、俺はただの同居人だから。
言葉の中に伝わってほしいと、少しだけホンキを混ぜて。
きっと、どこかで気づいてくれる。
そんな望みを少し出して。
高望み?イヤ、何も望んじゃいけない。
何かを望んでしまえば、脆く崩れてしまう…そんな関係なんだ。
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