living.12

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「ん?」 まだ不思議そうな目が見上げてくる。 無防備なソレが、俺に軽いめまいを覚えさせて。 うん、あぁ……なんか、いろいろヤバい。 「……俺、なんか変なこと言った?」 襲ってくる抱きしめたい衝動を抑えながら、小さく笑みを浮かべて聞いた。 「う、ん…いい」 何か言いたそうだけど、言葉を飲み込んだようで視線を逸らす。 あげはさんはいろんな感情を隠すのはウマいけど、こういう時はいつも隠しきれていない。 気づいているけど、気づかないフリ。 きっと、ソレについては何も言われたくないだろう。 「そろそろ帰ろっか?」 ここに長居をしてはいけないことくらいは知っているから。 何も聞く気はないよという意味を込めて、あげはさんの髪をクシャッとする。 今は、コレ以上踏み込むことができなくて。 最初の頃のあの勢いみたいに近づくことができない。 反応が怖いから。 イヤ、きっと、反応なんていつもと変わらずしてくれないだろうけど。 臆病になっていく自分の心。 何をこんなに弱気になっているんだろうと思うけれど。 ソレを悟られないようにしないといけない。 約束の時はもう…すぐそこまで来てるから。 その時が来たら、俺はどうするんだろう……? 「七夕、月海、またね」 「退院したら教えてくださいね」 「わざわざ来てくれてありがとう」 全てを隠して、何も言わないでいることはしんどいけど。 これは、自分で選んだ、道。
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