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「ん?」
まだ不思議そうな目が見上げてくる。
無防備なソレが、俺に軽いめまいを覚えさせて。
うん、あぁ……なんか、いろいろヤバい。
「……俺、なんか変なこと言った?」
襲ってくる抱きしめたい衝動を抑えながら、小さく笑みを浮かべて聞いた。
「う、ん…いい」
何か言いたそうだけど、言葉を飲み込んだようで視線を逸らす。
あげはさんはいろんな感情を隠すのはウマいけど、こういう時はいつも隠しきれていない。
気づいているけど、気づかないフリ。
きっと、ソレについては何も言われたくないだろう。
「そろそろ帰ろっか?」
ここに長居をしてはいけないことくらいは知っているから。
何も聞く気はないよという意味を込めて、あげはさんの髪をクシャッとする。
今は、コレ以上踏み込むことができなくて。
最初の頃のあの勢いみたいに近づくことができない。
反応が怖いから。
イヤ、きっと、反応なんていつもと変わらずしてくれないだろうけど。
臆病になっていく自分の心。
何をこんなに弱気になっているんだろうと思うけれど。
ソレを悟られないようにしないといけない。
約束の時はもう…すぐそこまで来てるから。
その時が来たら、俺はどうするんだろう……?
「七夕、月海、またね」
「退院したら教えてくださいね」
「わざわざ来てくれてありがとう」
全てを隠して、何も言わないでいることはしんどいけど。
これは、自分で選んだ、道。
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