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「……怒ってない?」
「怒られたいの?」
っていうか、何に対して怒ればいいのか、まずソレを教えてほしい。
「怒られる覚悟で帰って来たのに…」
「どんな覚悟だ」
正座でいたのはどうやらあたしに怒られると思っていたようで、ソレがないとわかるとやっと姿勢を崩す。
安心したのか表情も緩んで。
「…どうせ、ここにいるのもあと少しなんだし」
「ん?何か言った?」
ボソッとつぶやくように言えば、伸びをしていた雷には聞こえなかったようで。
聞かれたかったわけじゃないから、別にいい。
「帰って来るなら言ってほしかったって言ったの」
「早く帰らなきゃっていう頭でいっぱいだったもので」
苦笑いを浮かべて後頭部をポリポリと掻く。
でも、帰って来る間に連絡しなきゃって、一回くらい思わないかな。
どんなに急いだって、車をぶっ飛ばすなんてできないわけだし。
「だからって、衣装のまま?」
「──げっ、着替えるの忘れてた」
イヤ、そこ忘れない普通。
「気になってたんだけど、それ花婿の衣装?」
「そうだよ、式当日に花嫁に逃げられる役」
「そう…なんだ…ってか、言っていいの?」
言っちゃダメなんじゃないかな…
どこから内容が漏れるかわからないのに。
まぁ、興味はないから言うこともないけど。
「あぁ、あげはさんテレビ見ないから。その設定はCMで流れてるから大丈夫」
ニヤッと笑ったと思ったら、その顔のまま隣に座ってくる。
雷の右手が髪に触れて、左手でマンガを奪われて。
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