1067人が本棚に入れています
本棚に追加
「言うけど…雷だってあたしのこと信用してない、よね?」
直接目を見ては言えなくて、視線を落としたままつぶやくように言うけれど。
演技に演技ではもう返せなくて。
ソレに引き込まれてホンネを言ってしまいそうになるから。
自分のわからない、ホンネを…
だから今、雷がどんな顔をしているのかわからない。
「…信用、してないわけない」
少し上から聞こえる声は真剣で。
でもそれは、演技、だよね…
ホントかなんて……
「……わかんないよ……」
小さく出た言葉は弱々しくて、フイに雷の手が左頬に触れる。
「あげはさん…」
「なに」
「俺のこと、少しでもスキ?」
「──っ……」
…今、ソレを聞かれるとは思わなくて。
雷がホンキで聞いてきたつもりはなくても。
どう答えていいのかわからなくて、言葉に詰まる。
「……あたし、キライなヒトと話なんかしないし、キライなヒトと一緒になんか住めない」
なんとか思ってることを言えたけど、きっと答えになっていない。
頬に触れていた手がそのまま髪を撫でる。
「俺はスキ…だよ?」
なんて言ってくるソレが、ホントかどうかなんてわからない。
真意を聞くことが怖くて。
……なんで、怖いんだろう……?
前のあたしなら、軽く流してることなのに。
「あげはさん?」
うつむいたまま何も言わないあたしを不思議に思ったのか覗き込んでくる。
その目を真っ直ぐに見れないのはナゼ…?
真剣な目。
ソレすら逸らしてしまって。
最初のコメントを投稿しよう!