living.13

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「ごめん……追い詰めてるなんて思ってなくて……」 「別に、あげはさんが思ってるほど追い詰められてなんかないよ?」 ウソだ…… さっき焦ったって言ったじゃない。 ソレって追い詰めてたってことと一緒でしょ。 止まることを忘れたかのように流れる涙をグイッと拭き、真正面で雷の目を見る。 「けじめって言うなら、賭けはあたしの勝ち?」 「俺、今気づいたんだけど、あげはさんに会う前からヒトメボレしてた」 「…会う、前?」 会ってなくてヒトメボレって何? 「お見合い写真、見惚れてた記憶がある」 「え、あたし、雷の写真なんて見てない」 「あー、多忙だったから撮るヒマなくて」 …よくソレでお母さん話進めたな… イヤ、きっと名前は聞いてるハズだから、写真いらなかったんだろう。 あたしが知らないなんて思ってもなかったと思うし。 「まぁ、だから、初めからあげはさんが勝ってたってこと」 コツンっと額同士をくっつけて。 慣れているハズの至近距離。 雷のホンネを聞いて、初めて今ここで意識した。 「近い…」 全部じゃないだろうけどホンネをぶつけられて、今までみたいに平気でなんかいられない。 近すぎる距離に、動揺も隠しきれなくて。 「俺の負けだから、俺のことスキなようにしていいんだよ?あげはさんがこの生活がイヤって言うんなら、すぐに荷物まとめて出て行くし」 少しでも離れようと試みていると、悲しげな目を見せてくる。 きっと、気づいてるんだ。 確かに今のあたしは、雷のことを恋愛の対象とは見てなくて。 この生活を終わらせることだってできる。 ……でも、なんでだろう…… じゃあ、実家帰るって言葉はいっさい、喉に張りついて出てこない。 いろんなわからない感情がグルグル回っていて。 出さなきゃいけない答えが、何も出てこない。 何を考えているかもわからなくなって。 もっと簡単に、答えなんて出るものなんだって思ってた、のに… いざ、ソレに直面すると、あたしってダメだな… 「……考え、させて……」
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