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「…あー、間違えた」
マンション前を通りかかる車の中。
物陰に潜む、どこかの週刊紙のカメラマンが見える。
まだいるんだ。
「お前、いい加減マンションに戻れ」
ウンザリと言う北馬さんは、ゆっくりとしたスピードでホテルへと向かう。
マスコミ対策と…あげはさんに会いづらい気まずさでここ一週間ほどホテルに滞在中。
その間に約束の日は過ぎて。
その日に出されるハズだった答えを聞くことができない、臆病になっている自分。
女々しいと自分でも思うけれど……
言うつもりもなかった気持ちを、言ってしまったあの日。
あげはさんがどこまでホンキに取ってるかわからないけど。
だけど、後悔はしていない。
あの日、混乱させてしまったあげはさんの前から逃げるように仕事に戻った。
一人、勝手に気まずくなって連絡もほとんどできず。
「ほとぼりが冷めたら帰る」
帰っても…あげはさんはいないかもしれない。
もともと、半年っていう約束だったし。
「ダメだ、着替えがなかった、取りに行くぞ」
「え、今から?買えば済むことじゃん」
「あるモノを増やすな」
守銭奴め…
初めからマンションには寄る予定だったようで、地下の駐車場に入って行く。
あー、なんか、なんかの陰謀…イヤ、策略?を感じるんですけど。
ゆっくり走ってたのはこのためだったのか。
「早く行って来い」
「……はいはい」
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