living.14

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けど、だけど…きっと、いない。 車から降りて、暗い部屋を想像する。 暗くて寒くてシンッと静まり返った部屋。 今までそんなことなかったから、考えても想像もつかないけれど。 乗り込んだエレベーターの中、深いため息しか出てこない。 会いたい、会いたくない、複雑な感情。 会ってしまうと、また逃げてしまうかもしれない。 あげはさんの出した答えを聞かなきゃいけないのに、聞いてしまうことが怖くて。 玄関を開けたそこは暗闇。 …あー、やっぱりいないん、だ…? 「おかえりなさい」 「た、だいま…」 いることにさほど驚きはしないけれど。 でも、暗闇にテレビの灯りだけってのは、ある意味怖いし驚いた。 ビックリして、あげはさんの前から逃げるっていうことを忘れてしまうほど。 「なんで電気点けてないの?」 「驚くかなと思って」 「怖かったよ」 苦笑混じりに言えば、してやったりな笑顔。 一週間前と変わらない笑顔に、少しだけホッとした。 だけど、いつ言われるかわからない死刑宣告を待っている感じ。 「……もう、いないかと思ってた」 「帰ろうかなとも思ったんだけど、いろいろめんどくさくて」 いつでもどこでも、どんな時でも健在だな。 あげはさんのめんどくさがりな性格。 「雷に…まだ何も言ってないしね」 イヤ、俺的には聞きたくないんだけど。 まぁ逃げてても? 先延ばしにしたところで、あげはさんの出した答えが変わるとは思えないけれど。
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