living.14

5/12
前へ
/165ページ
次へ
「……こうやって優しくされる資格も、スキになってもらう資格もない」 「資格なんて…」 「だって!あたしはこの半年をただなんとなく過ごしてきただけ!」 声を荒げて俺の言葉をさえぎり、申し訳なさそうな顔を見せて。 最後に見た泣いているあげはさんの目を思い出す。 その時と同じ目をしているから。 「自分のしたいようにしてきただけ……」 「あげはさんはソレでいいと思うよ?」 縛って身動きの取れない生活をしてほしいわけじゃない。 自然体でいてほしい。 「ヒトとしてダメでしょ」 今度は困ったように笑う。 自身のイヤな部分を曝け出して、引き離そうとしているようにも思える。 でも、そんなこと今さらだけどね? 全部は知らなくても、案外知ってると思うんだ。 ホンキではウソがつけないとか、すっごいめんどくさがりとか、料理上手だけど掃除はヘタ、とかいろいろ。 「……前にさ、暗い過去は一つもないって言ったことあるよね」 「うん、確か七夕さんの子供が産まれた時に」 少しだけ、あげはさんの心に触れられたかもしれないと、勝手に思った日。 「一つだけ…ホントは誰にも言えない秘密があるんだ…」 ツラそうで、言いたくないんだろう。 今までそういうことを言わなかったのは、ホントに話したくなかったからで。 どうして俺にソレを話そうとしているのかわからない。 「あるの?」 「実はあたしさ………だったんだよね」 「──えっ、マジ?」 耳元で小さく言われたソレに、ただ驚くことしかできなかった。 そんな衝撃の事実、あるとか思えなくて。 少し離れて驚く俺に、ツラそうにまた苦い表情を浮かべる。 思い出したくないこと、だったんだろう…きっと。 「雷と過ごしてきて、結構楽しかった。すぐにイヤになると思ってたのに」 秘密を話はしたけど、目は追究してくるなと語っていて。 言葉に詰まっている間に話を元に戻した。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1067人が本棚に入れています
本棚に追加