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「……こうやって優しくされる資格も、スキになってもらう資格もない」
「資格なんて…」
「だって!あたしはこの半年をただなんとなく過ごしてきただけ!」
声を荒げて俺の言葉をさえぎり、申し訳なさそうな顔を見せて。
最後に見た泣いているあげはさんの目を思い出す。
その時と同じ目をしているから。
「自分のしたいようにしてきただけ……」
「あげはさんはソレでいいと思うよ?」
縛って身動きの取れない生活をしてほしいわけじゃない。
自然体でいてほしい。
「ヒトとしてダメでしょ」
今度は困ったように笑う。
自身のイヤな部分を曝け出して、引き離そうとしているようにも思える。
でも、そんなこと今さらだけどね?
全部は知らなくても、案外知ってると思うんだ。
ホンキではウソがつけないとか、すっごいめんどくさがりとか、料理上手だけど掃除はヘタ、とかいろいろ。
「……前にさ、暗い過去は一つもないって言ったことあるよね」
「うん、確か七夕さんの子供が産まれた時に」
少しだけ、あげはさんの心に触れられたかもしれないと、勝手に思った日。
「一つだけ…ホントは誰にも言えない秘密があるんだ…」
ツラそうで、言いたくないんだろう。
今までそういうことを言わなかったのは、ホントに話したくなかったからで。
どうして俺にソレを話そうとしているのかわからない。
「あるの?」
「実はあたしさ………だったんだよね」
「──えっ、マジ?」
耳元で小さく言われたソレに、ただ驚くことしかできなかった。
そんな衝撃の事実、あるとか思えなくて。
少し離れて驚く俺に、ツラそうにまた苦い表情を浮かべる。
思い出したくないこと、だったんだろう…きっと。
「雷と過ごしてきて、結構楽しかった。すぐにイヤになると思ってたのに」
秘密を話はしたけど、目は追究してくるなと語っていて。
言葉に詰まっている間に話を元に戻した。
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