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「電気も点いてなくてこの距離にいてさ、襲われても文句なんか言えないんだよ?」
「──や、ちょっ」
ソファーに押し倒せば、初めて見せる抵抗。
この半年、どんなことをしても余裕を見せていたのに。
俺が何もできないとでも思っていたみたいだけど。
それにしても、反応が新鮮すぎて少し戸惑いを覚える。
でもそんな一瞬の隙を見逃さないのがあげはさんであって。
スルッと逃げ出したあげはさんは、急いで電気を点ける。
「卑怯よ!力では敵わないことわかってて!」
「そんな力任せにしたみたいに言わなくても」
実際軽く押し倒しただけで、あげはさんが簡単に逃げ出せるほどだし。
「この家にいるなら逃げられないよ?スキになってもらうまで全力でいくから」
「そんなことでスキになるなら、とっくにスキになってると思うけど」
「確かにそうか」
さっきちょっとだけ警戒心を見せてたのに、もうソレをなくしてる。
宣戦布告されたけど、スキになってもらうには強引にいかなきゃいけない気がするんだ。
「スキになるまでってことは、もし仮にスキになったとしたらその途端捨てられそう」
「イヤ、その先もずっとだけど」
捨てられそうって言うけど、逆だと俺は思うんだよね。
そんなことにはならないようにがんばるつもり。
「あげはさん、おいで」
「なんで」
普段言わないことを言えば警戒した表情。
今になって、さらにいろんな表情を見れるのは嬉しい。
やっぱり今までは、どこか線引きされてたから。
でも警戒していても、そこから逃げはしなくて。
「前に場数踏んでるって言ってなかった?」
「ウソに決まってるでしょ。三人…くらいしかつきあったことない」
指折り数えるその姿に、やっぱりなと思う。
なんとなく、ウソなんだろうなとは思ってた。
けどそこら辺は巧みに交わしてたから、ホントかどうかまではわからなくて。
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