last living

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「……ん?」 「あげはちゃん、店の外に不審者がいるわ」 「そのようですね……」 何をやってるんだろう。 木枯らしの吹く寒空の下でマスク姿のヘンなヒト。 …もとい、昨日からホントにダンナになった、雷。 「……何してんの」 「え、なんでバレた?」 …マジでソレ言ってんの? 見つけてくれと言わんばかりに不審な動きしてたのに。 「バレない方がおかしい。周さんだって気づいてたわよ」 「いらっしゃい、中で暖まって」 「招き入れるんですか、不審者を」 「ごめんなさい、不審者じゃありません、入れてください。あげはさんに会いたくて来ただけです」 バカ正直に言わなくてもいいのに。 しかも最後に会ったのは今朝のこと。 ていうか、今日仕事って言ってなかったっけ? 周さんに休憩室に案内されてる後ろ姿を見ながら首を傾げる。 何時からとかって聞いてなかった。 まぁ、急にお休みっていうこともあるんだろうけど。 ……あるんだろうか? 知らないや、そんなこと。 「仕事は?」 「あ、そうそう、ソレ言いに来たんだった」 なんか、ついでみたいに言うのね。 それに、聞くまで忘れてたっぽいよ? 気を利かせてくれたのか知らないけど、周さんはソソクサと出て行くし。 イヤ、いてくれて全然よかったんだけど。 そんなことされても、逆に困る。 出勤してすぐに周さんには報告したからなぁ。 五十嵐になりましたって。 ひとしきりおめでとうって言われて、ちょっと罪悪感。 売り言葉に買い言葉、みたいな感じで婚姻届を出したから。 「新しい仕事が入って、帰りが明日になりそう」 「ふ~ん、そう」
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