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「…時間なくなったからもう行くけど、帰ったらホントに今までにないくらいに甘くしてやるから」
「うん、がんばれ」
負け惜しみ、みたいに聞こえるんだけどな。
言われた言葉はわからないけど、理解しようとは思わない。
再びマスクをして出て行こうとして、何か思い出したのか戻ってくる。
「忘れ物」
って言って、また軽いキス。
ことある毎にされてる気がするし、そんな忘れ物はない。
「いってきます」
すっごい笑顔で手を振って今度こそ出て行った。
そこら辺はなんか、流されてるなぁって思う。
でも雷はあたしのことよくわかってるから、そこまで強引にしないとダメだって気づいてるんだろうな。
「周さん、今度あの不審者が来ても招き入れないでください」
休憩室から出てため息混じりに言えば、周さんは苦笑いを浮かべる。
「不審者って…ダンナさんでしょ」
そんなこと言われても、あたしまだなんの実感も湧いてないし。
ぶっちゃけ、ヒトとしてはスキ、程度なんだよね、まだ。
雷をスキ、にはまだなってない。
「ダンナでもなんでも、あんな怪しい格好で外にいたら不審者ですよ」
「まぁ、五十嵐雷がストーカーっぽいことしてたら世間が騒ぐものね」
いやぁ、そういう問題じゃないと思うけど。
ストーカーは誰だろうと世間は騒ぐから。
「ホント…もう二度と来ないでほしい…」
「あげはちゃん、ホンネだだ漏れ」
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