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気分はもういいのか、顔色の戻った天然悪魔な彼女が、俺を見ないままポツリとつぶやく。
「……あたしの着替えは?」
「さぁ?」
着替えなんて、そんなもの知らない。
母親達も荷物は何も持ってなかった。
「脱がせましょうか?」
「──断る!」
冗談で言ったのに全力で拒否されたよ。
こういう反応、俺的にはめちゃめちゃ新鮮。
周りにこんなタイプがいなかったわけじゃない。
ただ、めんどくさそうな気がして避けてたんだ。
「………はぁ、お母さん何か言ってた?」
そのため息は、なんかいろいろ諦めた感じに聞こえる。
「荷物は業者に頼んでるらしいですよ。あと、あなたとは一緒に住めないのかって、僕脅されました」
「……おかん!ヒトを脅すなよ!」
イヤ、ソレ俺に言われてもね?
「まぁいっか。荷物って今日届くのかな」
掴めないヒトだ……
さっきは帰るとか言ってたくせに、ここに住むことに対してもうすでに否定をしない。
諦め?
そんな簡単に?
「ねぇ、お話しましょうよ。あなたの名前もう一回教えて」
「五十嵐雷です」
「雷、でいい?あたしより年下だよね」
中庭での警戒心なんてひとっつもない、ニコニコした笑顔。
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