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こっちはいろいろと拍子抜け。
だって、もっと否定してくれると思ったから。
そしたら、まだ早いとかなんとか言って、新居からオサラバできると思ったのに。
「スキなように呼んで下さい」
「そ?じゃあ雷、あたし無職だけど、ここの家賃どうしようね?」
「………はっ?」
何ソレ?そんなこと聞いてない。
その歳で仕事してないってどういうこと?
「ごめんね?仕事は探すけど、すぐには見つかんないかも」
申し訳なさそうに小さく首を傾げ、顔の前で両手を合わせる。
無意識にするその仕草。
ドキッとなったのは、きっと、気のせい。
「あ…イヤ、なんとかなると思います。僕が生活費出しますから、家のことを全部任せていいですか?」
「いいけど……ん~、やっぱ探す。あたし、マンガないと生きていけないから、その分まで雷に出してもらうわけにはいかない」
そういえばこのヒト、マンガ好きだった。
買うな、とか言ったらキレそう。
「……じゃあ、この生活に慣れて余裕ができたら、追々探して下さい」
「当分お世話かけます。それから~っと、立ったままだった、雷も座って」
何もない部屋でニ人、何をやってるんだろうとふと現実に戻る。
これから始まるだろう新生活、ワクワクもドキドキもしない。
新居なのに、自分の家じゃない感覚。
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