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ホント、前以って連絡欲しかった。
まっ、少し遅くなっても大丈夫でしょう。
急かしてたけど、実際何分でも待つヤツだし。
ヒトが待ってるってわかっててそんなのんびりは行かないけど。
目安で五分って言っただけであって、実際は何分かかることか。
住宅地だけど信号あるしね。
ホラ、赤。
「あげはさん?」
赤信号で止まってる車から、大きな声で名前なんか呼ばれちゃって……
………え?あたし?
バタンッと音がして駆け寄って来る靴音。
「あ、やっぱりあげはさん。何してるんです?こんなところで」
横に立つソイツは、さっきテレビで見たばかりの顔。
ただし、メガネなし。
それにしても、メガネ一つで変わるって詐欺じゃない?
「あげはさん?聞いてます?」
「…あぁ、うん、聞いてるよ。マンガ取りに実家戻ってただけ」
言って、両手に抱えたマンガを見せる。
あたしが話をちゃんと聞いてたことが不満なのかなんなのか、なぜかつまらなそうな表情をする。
「あたしのことより、車じゃないの?」
「うん、送ってもらっただけ」
「ふーん、げーのーじんは大変ね?」
何がどう大変なのかさっぱりわかんないけど、青に変わった横断歩道を渡りながら首を傾げて言った。
だって、大変じゃない仕事ってないだろうし。
「気づいてたんですね」
「イヤ、さっき母親が騒いでて初めて知った」
すまないね。
今のところ現実の男に興味はないのだよ。
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