living.1

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「失礼します。遅くなりました、北原と申します」 お母さんは襖…イヤ、障子か…を開け、深々と頭を下げる。 イヤ、遅くなったのって、着付けてくれたヒトがモタモタしてただけだからね。 本来なら早くても十分前にはここに来れてた。 「いえ、大丈夫ですよ」 中から気のよさそうな女のヒトの声。 「遅れてしまい、申し訳ありません」 帯がキツいんで、頭を下げるのもやっとの思い。 さて、今度はどんな優男だ? 顔を上げれば、ニコニコと微笑む…美男子! イヤイヤ、あなたお見合いなんかしなくてもいいでしょう! ってくらいの爽やか系のイケメンが座ってた。 え?もしかして中身は残念系ってこと? うん、ホントに、なんでお見合いなんかしてんの?って今すぐ聞きたい。 「あげは!」 ヤバっ、思考停止してた。 だってホントに、黙ってても女のヒトいっぱい寄って来そうなんだもの。 不思議じゃない? 性格に難あり、とか? 見惚れてたとかは全然ないけど慌てて席につくと、クスクスと笑われる。 絵になるような笑い方をしますね。 作ってますって感じ。 まぁ、こんな席だし、作るのは当たり前か。 現状、自分だって愛想笑いだし。 ただ帯がキツいだけ。 もう二度と着たくない。
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