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「失礼します。遅くなりました、北原と申します」
お母さんは襖…イヤ、障子か…を開け、深々と頭を下げる。
イヤ、遅くなったのって、着付けてくれたヒトがモタモタしてただけだからね。
本来なら早くても十分前にはここに来れてた。
「いえ、大丈夫ですよ」
中から気のよさそうな女のヒトの声。
「遅れてしまい、申し訳ありません」
帯がキツいんで、頭を下げるのもやっとの思い。
さて、今度はどんな優男だ?
顔を上げれば、ニコニコと微笑む…美男子!
イヤイヤ、あなたお見合いなんかしなくてもいいでしょう!
ってくらいの爽やか系のイケメンが座ってた。
え?もしかして中身は残念系ってこと?
うん、ホントに、なんでお見合いなんかしてんの?って今すぐ聞きたい。
「あげは!」
ヤバっ、思考停止してた。
だってホントに、黙ってても女のヒトいっぱい寄って来そうなんだもの。
不思議じゃない?
性格に難あり、とか?
見惚れてたとかは全然ないけど慌てて席につくと、クスクスと笑われる。
絵になるような笑い方をしますね。
作ってますって感じ。
まぁ、こんな席だし、作るのは当たり前か。
現状、自分だって愛想笑いだし。
ただ帯がキツいだけ。
もう二度と着たくない。
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