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「大丈夫です。堂々としてれば意外と気づかれないものですから」
「へ~」
聞いてきといて、やっぱり興味なしかい。
ムカつくなぁ。
これでもかなり有名なのに。
「大変だ」
……今度は何?
「重要なこと思い出したんだけど」
「なんですか?」
なぜか深刻な表情を見せてくるから、真剣に聞いてみたのに……
「キライなモノ、ある?」
「はぁ?」
そんな質問に間の抜けた声が出た。
イヤ、ビックリだよ。
そんなこと聞かれるとか思わないし。
「だって重要でしょう。あたし、雷の母親でも、ましてや彼女でもない」
「そうですね」
「しかも作るのは今日が初めて。口に合うか合わないかの以前にスキなモノも知らなくて、この先半年は一緒にいるのに作れるわけがない」
……あぁ、そういうこと。
スキキライがわからないと作れるモノも作れない、か。
「一番キライなのはその手に持ってるモノです」
昔からキライなんだよね、ニンジン。
入ってたら確実に残す。
がんばって食べようとか思わない。
「おいしいのに」
ため息混じりにつぶやき、買うのを諦めるあげはさんは他には?という目を向けてくる。
「あとは~…」
「思い出したら教えて。とりあえずカゴの中のモノは大丈夫、よね?」
考えていたらそんなことを言われて中を見る。
「あ~、大丈夫です」
基本的に野菜はキライだけど、食べられないほどではない。
ニンジン以外は。
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