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「そ」
ニッコリと笑うとそのままレジへと。
俺、生活費…まだ渡してなかった…
「あげはさん、コレ使ってください」
「…どうも」
受け取るけど、なんか渋々と言った感じ?
なんで?
当たり前のことをしたまでなんだけど。
順番待ちをしている間に聞いても、答えてくれなかった。
追究してくるな的な雰囲気を出してくるからそれ以上聞けず。
一緒に生活をしていけば、そういうところわかってくるのだろうか?
「持ちます」
訝しげな表情で見られて、今度はなんなんだ?
でもまた何も言わなくて、ただため息をつかれただけ。
女のヒトの喜ぶことをしただけなのに、このヒトやっぱりわからない。
どうやらあげはさんの機嫌を損ねたらしく、帰ってきても無言のまま。
彼女が機嫌が悪いなら、何かいろいろできるだろうけど。
でも彼女じゃないし、どうしていいかわからない。
なんか……耐えられない空気。
「……あげはさん?」
チラッとこっちを見たあげはさんのその手には……
──なんで!?
さっき買ってないのに!
「お願いですから怒ってる理由教えてくださいよ~」
必死になって嘆く俺に、極上の笑みを浮かべる。
ただこのヒトって美人だから、ソレがすっごい怖い。
「ニ…ニンジン入れてもいいですから~」
俺、誰だよ。
今までに誰かのご機嫌を取ったことなんかない。
彼女がいたことはもちろんあるけど、ここまで機嫌が悪くなるなんてことはなくて。
このヒトといると自分が自分じゃなくなる気がする。
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