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「こら、雷」
ぅわぁ、美人親子、ずっと観賞してたい。
お母さん、どこからこのお見合い話持って来たんだろう。
不思議。
よそごとを考える余裕はまだあるんだけど、ちょっとしんどいな。
何度も言うけど、帯が。
「初めまして、五十嵐雷と言います。今日はよろしくお願いしますね?」
……お願いされちゃった。
チラッとお母さんの方を見れば、あ、ヤバい、目がうっとりしてる。
「…あ、こちらこそ…北原あげはと申します」
正座をしてもう一度頭を下げれば、もう、ヤッバい、めっちゃ帯に圧迫されてます。
ぎこちない笑みを相手方に向けると、ニコニコと真逆の笑みが突き刺さった。
ぃやぁ、ダメだ。
今はソレに勝る笑みを浮かべることができない。
兎にも角にも帯のせいだ。
「あげはさん、さっそくですが二人で少しお話しませんか?」
えぇ?早っ。
まだ名前名乗っただけなのに。
普通ならまずここで四人でお喋り、みたいな感じでは?
イヤ、今までのお見合い即行帰ってるからわかんないけど。
「それなら雷、お庭がキレイだったから二人で見てらっしゃい」
「あら、それはいいですね。あげは、見て来るといいわ」
いいわ…って、お母サマ、そんなんでいいの?
まぁ、初めっからウマくいくなんて思ってないし、こんな美形があたしを相手にするなんて思わないし。
手っ取り早く終わらそう、的な様子も窺えんこともないですよ?
「では、あげはさんを少しお借りしますね」
相変わらずニコニコと席を立ち、座ったばかりのあたしの手を引き立たせると、その手を握ったまま部屋を出る。
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