living.1

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「こら、雷」 ぅわぁ、美人親子、ずっと観賞してたい。 お母さん、どこからこのお見合い話持って来たんだろう。 不思議。 よそごとを考える余裕はまだあるんだけど、ちょっとしんどいな。 何度も言うけど、帯が。 「初めまして、五十嵐雷と言います。今日はよろしくお願いしますね?」 ……お願いされちゃった。 チラッとお母さんの方を見れば、あ、ヤバい、目がうっとりしてる。 「…あ、こちらこそ…北原あげはと申します」 正座をしてもう一度頭を下げれば、もう、ヤッバい、めっちゃ帯に圧迫されてます。 ぎこちない笑みを相手方に向けると、ニコニコと真逆の笑みが突き刺さった。 ぃやぁ、ダメだ。 今はソレに勝る笑みを浮かべることができない。 兎にも角にも帯のせいだ。 「あげはさん、さっそくですが二人で少しお話しませんか?」 えぇ?早っ。 まだ名前名乗っただけなのに。 普通ならまずここで四人でお喋り、みたいな感じでは? イヤ、今までのお見合い即行帰ってるからわかんないけど。 「それなら雷、お庭がキレイだったから二人で見てらっしゃい」 「あら、それはいいですね。あげは、見て来るといいわ」 いいわ…って、お母サマ、そんなんでいいの? まぁ、初めっからウマくいくなんて思ってないし、こんな美形があたしを相手にするなんて思わないし。 手っ取り早く終わらそう、的な様子も窺えんこともないですよ? 「では、あげはさんを少しお借りしますね」 相変わらずニコニコと席を立ち、座ったばかりのあたしの手を引き立たせると、その手を握ったまま部屋を出る。
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