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「テレビの中の雷も、今あたしの前にいる雷も、なんかつまらなそう」
「──っ」
言葉に、ならなかった。
そんなとこまで見透かされてるなんて。
俺もまだまだ、だな。
「あたしはさ、テレビの雷を知らなくて、知ってるのは企んだような目をする雷なのよ」
「…企んだ?」
「あら、お見合いの時、楽しそうにそんな目をしてたじゃない」
そこまでバレてるとは……
ヒトのこと見てなくて疎そうなのに。
「今、楽しい?」
「……そうだね、こういうことしていいってわかったから楽しいかも」
バレてるならもういい。
正直、あの性格続けるのしんどいとは思ってたし。
壁に追い込んで顔を近づけてみるけれど、このヒトひとっつも動揺なんかしていない。
「刺すよ」
なんで包丁放してないんだよ。
俺、この先の生活に危機感持ったよ、今……
「あたしをどうオトすか知んないけど、こういうことは通用しないから」
「オトすの難しそうなヒトだね」
「そこ、普通声に出す?」
あれ?出てたことに気づかなかった。
「こんなんでオチるほど飢えてないし、場数、踏んでますから」
この至近距離でも微動だにせず、俺を挑発してくる。
確かに、黙っていれば美人だし寄って来る男なんていっぱいいただろうけど。
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