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何回か往復しているとウマそうな匂いが漂ってくる。
なんだろう……
今までにこういうことがなかったわけじゃない。
疲れて帰って来て、何やってんだろうとは思う。
だけど、ベタベタするわけでもなくワイワイ言ってくるわけでもない、こんな雰囲気がいいと思えた。
「何笑ってるの?」
カレーを混ぜながら眉間に皺を寄せて聞いてくる。
笑ってた?
うん、まぁ、きっとこの生活は大変なもの。
それが楽しいかもしれない、なんて思ったから。
「気のせい気のせい」
「ふ~ん」
「もうできそう?」
「できたら呼ぶよ」
ニンジンが入ってると思うと若干気が引けるけど。
「よろしく」
最後の箱を部屋に下ろすと伸びを一つ。
一息つくと、それがため息に思えた。
なんなのかはわからない。
ニンジンなのか、これから始まる生活になのか。
「……あぁ、疲れた」
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