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……わぁ~、手を繋ぐなんて久しぶり~。
今までつきあってきた男は揃いも揃って手を繋ぐのはガキの証拠、とか言うヤツばっかだったもん。
そういや彼氏も二年以上いないな。
だってね、三十路になるとね、男も別にいっか~みたいなね?
いなくても生きていけるし、自分の時間いっぱい取れるし、気を遣わなくていいし。
「あげはさん!」
「はいっ!」
マズイ、すっごい思考がズレてた。
なんか話してたっぽいんだけど。
「聞いて、ませんでしたね」
それは聞いてるわけじゃない、確実に聞いてなかったことをわかってる上で言ってくる。
変わらないニコニコとした笑みが、逆にあたしを追い詰めてくる感じ。
「…申し訳ありません」
ただ、あたしだって、そんなことで屈しないんだから。
なぜかわからないけど、いつのまにか距離がめちゃくちゃ近くて。
おかしいな、さっきまでは二、三歩先を歩いてたはずなのに。
少し手を伸ばせば、すぐに触れる距離。
聞いてなかったことの謝罪を小さくすれば、なぜか笑みが消える。
そしてさらに距離を縮めてきて、見下ろされる形。
さっきまでのニコニコはどうしたのよ。
「……お見合いの定型文なんて聞くだけムダのようですね」
定型文って何よ。
こっちは四回目だって言っても、相手のヒトと話をするのは初めてなんだから。
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