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「雷、連絡は?」
玄関を開けた先で仁王立ちする同居人は、今までで一番機嫌が悪い。
笑顔も何もない、無表情に言い放ったソレは俺が完全に忘れてたこと。
ただ連絡をしなかっただけで、こんなに機嫌が悪くなるとか思ってなかった。
「連絡もしないようなヤツ、この家には入れない」
確かにソレを忘れていた俺が悪いのだけれど。
忙しくて連絡できなかった、って解釈はしてくれないのか。
「ふざけんな?あんたはテレビでヒッパリダコかもしんない。だからって五分の休憩もないのか」
「イヤ…ハイ、あります」
久しぶりに帰って来て早々の、玄関先での説教。
しかもホントに一歩も入れてくれないから、正しくはまだ玄関前。
昼過ぎという時間だけど、誰かが帰って来る可能性もあるわけで。
「あの、とりあえず、見つかる可能性があるので中に入れてもらえませんか?」
仁王立ちする彼女がなんだか怖くて、言葉遣いも敬語になってしまう。
マジで怖い。
「見つかればいいじゃない」
「……そうなると、また引っ越しですよ?」
ソレを言えば何か考えているのかアゴに手を当てる。
まだ一ヶ月も経っていないのに引っ越すのは俺だってエンリョしたい。
別にあげはさんは引っ越ししなくてもいいんだけど。
「玄関で正座」
まぁ……入れてくれるだけヨシとしよう。
「──で?」
「はい?」
言われた通り玄関で正座をすれば、このヒトは何が聞きたいのか。
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