1065人が本棚に入れています
本棚に追加
「仕事だったことは把握してる。連絡できなかった言い訳を聞きましょうか?」
仁王立ちも変わらない、醸し出す機嫌の悪さも変わらない。
なのに、俺…仕事のしすぎかな?
今のこの状況がなぜか心が落ち着く。
過ごした時間なんか関係ないって、そう思わせてくれる、ヒト。
作らなくていいから、かな?
「すみません、書いてもらった紙がどっかいきました」
「コレ?」
目の前にズイッと出されたソレは、あげはさんの連絡先が書かれた紙。
どこに置いてたかすら忘れていたモノ。
「こちら、テーブルの上にそのままありましたが」
放された紙がヒラヒラと落ちてくる。
ソレを取るべきなのか考えている間に音も立てず床の上へ。
「普通、忘れる?」
「すみません」
「今すぐ登録してあたしにワン切り」
言われるままにポケットから取り出して、床の上にある番号を登録する。
ソレをそのままかければ、リビングの方から音楽が聞こえて。
あ、一回鳴らすだけでよかった。
「次からは必ずかけてくるように」
「はい」
あー、ホント何やってんだろ。
赤の他人で、ホントなら一緒になんか住んでない。
別に俺の連絡先を教えなくてもよかった。
だけどやっぱり、あげはさんを見る度に思う。
この先、まだ一緒にいてみたい、と。
最初のコメントを投稿しよう!