1065人が本棚に入れています
本棚に追加
「…聞いてる?」
「いいえ」
素直に聞いてなかったことを告げれば、案の定返ってきたのは深いため息。
「連絡、できなくてごめんね?」
「……もういいわよ」
あ、諦めてくれた。
やっぱり素直に謝ることは大切。
というか、これ以上はめんどくさくなったに違いない。
「その変わり…」
「え?」
立ち上がってもいいだろうかと、彼女を見た瞬間。
何か思いついたようでニヤッと笑った。
…イヤな予感…
「バツとして今から実家に一緒に行ってもらうから。げーのーじん五十嵐雷として」
「──はぁ?」
イヤ、ちょっ、ソレどういうこと?
なんのバツ…や、連絡しなかったことに対してだろうけど。
「帰って来たってことは今日はお仕事もうないんでしょ?」
「仕事は、終わった、けど…えぇ?」
話が飛び過ぎて理解不能。
結婚とか、そんなことするつもりもないのに、遊びに行くわけじゃない相手の実家に行くというのは…
え?あげはさん、俺と結婚したいの?
「雷の大ファンの母が、今か今かと待ちわびて催促の電話がかかってきました」
「催促って…俺、モノ?」
「ある意味?」
立ち上がり苦い表情になる俺に、彼女はクスクスと楽しそうに笑う。
その笑顔を見て、もう機嫌はよくなったようで。
とりあえず、さっき考えたことは関係なかった。
最初のコメントを投稿しよう!