living.6

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「今から?」 「あら、イヤなの?」 ニコニコと笑うその笑顔になぜか逆らえない。 っていうか、今日は逆らってはいけない気がする。 リビングに入ればすっかりとキレイになって、少し配置変えもした模様。 あげはさんが住みやすいならどんなに変わってもいいんだけど。 俺、別にどうでもいいし。 「イヤじゃないけど、五十嵐雷として実家へ?」 「何人、気づくかしらね」 「ソレって、一緒に行くあげはさんもとばっちり食うよ?」 メガネかけてなければあまり気づかれないけど、かけて行くとなると気づかれないという自信は、ない。 メガネ効果ってスゴいと思う。 「……数歩先を歩いて他人のフリをするから」 「ムリだと思う」 「どうしてよ」 あ、膨れっ面。 こういうとこ、年相応に見えないなぁ。 ムリに大人ぶろうとしない、自然体のあげはさん。 年齢を知らなければ、確実に年下だと思ってしまう。 「俺がずっと話しかけるから」 「ムシする」 「じゃ、手繋いで離さない」 笑顔であげはさんを巻き込もうと考えていると、めちゃくちゃ深いため息。 コロコロと変わる表情は見ていて飽きないかも。 「ハイハイ、お手々繋いで行きましょうね」 めんどくさいと思ってる時と俺をイジメる時は、余裕のある年上にしか見えない。 「あ、イヤ、大丈夫、です、ハイ…」 そうくるとは思わなかったよ! 「あら、雷が先に言ったんでしょ」 「だってあげはさんの言い方、チビに対する言い方だった」 「……違うの?」 ……え?俺ガキ扱い? 確かに年下だけど、三つしか違わないし…… あ、でもこのヒトにとったら三つの差なんて? なんて思っていると、目の前で楽しそうに笑ってる。
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