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「五十嵐雷、として?」
「おスキなように?」
え、何?
やっぱりさっき言ってたのって、ただのイヤガラセ?
玄関を出る俺は苦難の表情を浮かべていたようで、ソレを見た彼女はまたまた楽しそうに笑う。
「あたしの機嫌も直ったことだし?」
あー、そっか、やっぱただのイヤガラセか。
このヒトの機嫌を損ねないようにしよう。
でないと、実家に向かってる途中でまた同じことを言いかねない。
「ありがとうございます」
「なんのお礼?」
エレベーターに乗り込んでそう言えば、キョトンとして小首を傾げる仕草。
……カワイイですね。
無意識だろうその仕草に小さく鼓動が跳ねて。
「あー…、なんか言いたくなっただけ」
「そ?」
わからない自分の理性と格闘しながら、少しの動揺を隠しつつ。
「この間も思ったけど、暑くない?」
外に出れば真夏の日差しが照りつけ、そろそろ夕方になるっていうのにまだまだ暑い。
なのに、隣を歩くヒトは長袖。
というか、長袖以外の服装って見たことないかも?
「日焼けはお肌に悪いのよ」
「ふ~ん」
女って大変だな。
でもよく見なくてもスッピンですよね?
そこが一番日焼けしたくないところじゃ?
まぁ、対して一緒にいるわけじゃない俺にホントのことなんて、言うわけないか。
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