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「あげははきっと一時間は部屋から出て来ないわよ」
思考を読まれたのか表情を見たのかそんなことを言われる。
緊張がなくなったわけじゃないから、一時間もこの状況…ムリ!
「どう?あげはとはやっていけそう?」
くると思ったその質問。
コーヒーを持って来て、向かい側に座るなり言ってくる。
きっとどこの親だって気になることなんだろう。
「すみません、なかなか家に帰れなくて、いつもあげはさんを一人にしてしまってるんです」
けれどウソを言ったってすぐにバレてしまうから。
だから素直に、正直に話す。
一緒に住むことになったのに、ほとんど家にいなくて寂しい思いをさせてるんじゃないかとは、ホントに思っていたことだから。
「人気者なのだからソレは仕方ないわ。あの子は別に一人でも大丈夫だろうし」
「そうでしょうか…」
母親が言うのだからそうなんだろうけど…
今の暮らしはしたくてしてるわけじゃない。
ほぼ強制的に始めた生活だから。
表に出すことはしなくても寂しいはず。
怒ったりはすぐするけど、そういう感情はまだ見たことなくて。
「なるべくなら家に帰りたいのですけど…」
「あげはに気を遣ってくれてるのね」
ニコニコと言われるけれど、こっちは苦笑いを浮かべるしかない。
口先だけならなんとでも言える。
今までだってそうしてきた、のに……
なぜだろう…
罪悪感が、胸をしめつける──
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