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「あった~」
実家から帰ってすぐ、前に渡された婚姻届を探していた。
たぶん、前に持って帰ったマンガの山のどこかにあると思って。
余っているもう一部屋を雷の承諾も得ず、勝手にマンガ部屋にしているのに、雷は何も言わない。
探し物は案外すぐに見つかって。
「……あ、あった?」
反応の遅い雷は一緒に探し始めたはずが、少女マンガを食い入るように読んでいる。
うん、でも、そのマンガはオススメよ。
「はい、こちら、婚姻届でございます」
「ぅわ~…ホンモノ、だ」
受け取ったソレに対してその反応はなんなんだろう。
自分で取りに行ったわけじゃないとそんな感じなのかな。
よくわからなくて首を傾げれば、今度は薄っぺらい紙の一部を指差し引きつった表情を浮かべる。
「なぁに?」
「…なんで、証人の欄が…?」
母親と雷のお母さんの名前がそこにはあって。
ここにあたし達を連れて来たあと、ニ人で取りに行ったんだろう。
「あぁ、いつ出してもいいように、だそうよ」
やっぱりそこ納得いかないわよね、嬉々として書いただろう顔が浮かぶけど。
ニ人ともそんなつもりはいっさいないのに。
ない…よね?
なんだかジーッと見つめてるけれど。
困ったような感じじゃない。
「あげはさん…」
「んー?」
「これ、いっそ出しちゃいます?」
雷の爆弾発言に、持っていたマンガがバサバサと音を立てて落ちた。
…あぁ、あたしのマンガ達…
「──っはぁ?」
というか、何を言ってるんだ、こいつは。
「はぁっ?」
「あ、ニ回も言う?」
もう一回言ってやろうか。
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