living.7

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「結婚…したいの?」 「イヤ、別に」 ……じゃあ、なんで出すなんて言うの。 雷の考えが全くわからない。 眉を寄せていると、そんなことを言った本人はすごく楽しそうにケタケタと笑い出す。 「結婚の一回やニ回したって何も変わらないよ」 「イヤよ、戸籍にバツがつくんでしょ。そんな黒歴史いらない」 「黒歴史って…」 何が面白かったのかまだ笑ってるし。 そんなおもしろおかしいこと、何も言ってないんだけど。 「使いたくなったら、他の誰かでどうぞ」 めんどくさくなってそう言えば、ピタリと笑うのをやめキョトンとする。 さすが役者。 なんて感心しつつもマンガを拾う。 開いて落ちてなかったのは幸いだわ。 少しでも折り目ついてたらショックだし。 「あげはさん、俺と結婚するのイヤ?」 首を傾げて聞いてくる?普通… 考えてたマンガのことが頭からすっ飛ぶほど。 「とりあえず、今はあなたとするつもりはない」 はっきりと言えば、なぜか不貞腐れた表情。 スキでもない男と結婚なんかしたって、あとで後悔するに決まってる。 あたしはそんな勢いみたいなこと、したくないんだよ。 いくらマンガ好きでも、人生をマンガのように生きたいわけじゃないから。 「雷、あたし、仕事始めたから」 婚姻届とか結婚とか、今はそんなこと考えたくなくて。 まだこの生活に慣れてもないのに、余計なことなんていらない。 「……はぁ?」 何も考えず、雷との生活を楽しんでみたいから。 たとえ、半年後にサヨナラするってわかってても。 そんな先の自分の気持ちなんて、今考えたってわかんないことだし。 何も変わらないと思うけど。 でも何も考えない方が縛られなくて、いい。
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