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「え~、俺の夢を実現できると思ったのに」
「夢?」
今の会話のどこに夢の話があったんだろう。
少し口を尖らせエレベーターから出て行く雷はいったい何を考えているのか。
「飲みに行った彼女を店まで迎えに行きたいっていうのが夢」
カギを開けるあたしににっこりと眩しい笑顔。
その笑顔、今いる?
さっきは口を尖らせてたのに。
どう返せばいいか何も思い浮かばなくて、無言で彼を見ることしかできなかった。
ドアを開けようとした手も止まってしまうほど。
「そんなに衝撃受けるようなこと言った?」
ぅわ、本人無自覚~。
すっごいキョトンとしてるし。
や、でも普通ならお迎えとか嬉しいものなのかな?
イヤ、待て待て、その前にあたし彼女じゃないし、そうするとこの反応おかしくないよね?
「……ま、まぁ、とにかく迎えとかぜったいいらないから」
玄関を入りながらそう言えば、なぜかつまらなそうな表情。
そんな顔されても。
「遅くならないし」
「……あげはさん、俺以外にクドかれたりしないでよね」
あなたにクドかれてるとは思えないんですが。
「あたし女子高」
「え!」
何、その嬉々とした笑顔。
恋愛感情はこれっぽっちもないけど、なんかムカつく。
「ウソに決まってるでしょ」
「喜ばせといて突き落とすの早すぎ」
喜ばせようと思って言ったわけじゃないんですけど。
「……女好き」
ボソッと言えば聞こえたのか苦笑いだけを浮かべて。
否定をいっさいしないってことはそうなのか。
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