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「夕方に洗濯物の取り込みお願いね。じゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい」
玄関でこうやって誰かを見送るなんて初めての経験。
なんか新鮮で、でも歯痒い感じ。
あげはさんといると、今まで知らなかった感情を知る。
それはきっとイイコト、なんだろうな。
「さて、と…」
暑い、きっと外は確実に暑いだろうが、ちょっぴり変装して後を追いましょう。
雑貨屋って言ってたけど、ホントかどうか。
まぁ…はっきり言えば、どんなところか興味もあるし気になる。
外に出れば少し先にあげはさんの姿。
暑いからだろうか、のんびり歩いている。
きっとあげはさんのことだから、時間に余裕を持って出てるハズ。
帽子を深く被り直し、そのあとを同じ歩調でついて行けばバレないだろうけど。
立ち止まり、知り合いっぽいヒトと挨拶を交わすその表情は、見たことが…ない。
そんな柔らかい笑顔は俺の前では見せたことがなくて……
表情がわかる距離にいるのに、なぜか寂しい……
今すぐその場に行って、その笑顔を間近で見たいと思ってしまう。
どうして自分がそう思うかなんて…わかるけれど、今はわかりたくない。
頭を軽く横に振り、再び歩き出したあげはさんを見失わないようについて行く。
マンションから十五分ほど。
見た目からして女性のスキそうな外観のその店に入って行く。
ただし、きっとあげはさんは仕事でもなければ入りそうにない店。
店はもう開いてるようで、店員らしき男のヒトが水撒き中。
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