living.8

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「いらっしゃいませ」 中を覗き込むように前に行けば、声をかけられ素通りもできず入るしかない。 ……バレませんように! 確実に怪しいヒト…のような感じで中に入れば、奥の方からあげはさんのいらっしゃいませという声。 店は俺が考えてた感じではなくて、アンティーク雑貨が見やすいように飾りのように並べられている。 うん、なんかスキかも、この雰囲気。 店なのに落ち着くっていうか。 ごちゃごちゃと置いてないからゆっくり見れそう。 あげはさんの職場の見定め、という当初の目的を忘れ見入っていた。 「あ、五十嵐雷、だ」 ……げっ! 何分見入ってたかわからないけど、名前を呼ばれ振り向けばそこには女のヒト。 どうしよう、ここは他人のフリを決め込むか… あ、でも、振り向いてしまったから、他人のフリはムリ… 考えを巡らせていれば、フンワリと微笑むその女性の後ろからめちゃくちゃ鋭い視線。 なんであげはさんそこにいるんですか… 「あげはちゃん、周くん、すごいね」 「なにが」 コーフン気味の女性と、少し低いあげはさんの声。 なんかもう、一言だけなのにすっごい怖い。 「芸能人だよ、めったにお目にかかれないよ」 「七夕、お忍びで来てるんだろうから、そんな大きな声出しちゃダメ」 この女性が紹介したって言う七夕さんなんだ。 じゃなくて! もうコレは完全にバレてる。 ただ、あげはさんのことだから俺との関係は言ってないだろう。 わざわざあった出来事を逐一報告するようなヒトじゃないだろうし。 「でも、なんでこんなとこに?」 キョトンとして首を傾げる七夕さんの後ろで、顔を押さえハフッとため息。
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