living.8

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呆れているらしいその表情は、どうやら俺がここにいる理由がわかったようで。 だからってわけじゃないけど、苦笑いを浮かべるしかない。 あげはさんて勘も鋭く頭の回転も速いよう。 「……七夕、あんた悪阻は?」 「今日はいい方」 「そう……」 さらにため息をついたと思ったら、ニッコリと笑顔をこちらに向けて。 あの……目が笑ってないです…… 「そこのヒト、飲み物入れるのでコチラにどうぞ」 七夕さんに見えないように笑顔を消すソレが非常に怖い。 何か理由をつけてここから逃げ出すことは不可能みたいだ。 …なるようになれ? ついて行って入った先は休憩室っぽい。 たったニ、三分のことなのに、めちゃくちゃ疲れが… 仕事してる時よりも疲労感がすごい。 あまり周りを見る余裕はなく、ススメられるままに椅子に座る。 「ね、ホンモノ、よね?」 ソファーに座りニコニコと言う七夕さんは、ソレをいったい誰に聞いているのだろうか。 や、たぶん俺に聞いてるんだろうけど。 今ヘタに口を開くわけにはいかないだろう。 イヤ、もうバレてるんだけどさ? 「七夕は?なんか飲む?」 「うぅん、大丈夫」 あー、どうしよう、この状況。 ホンモノだってことは別に言ってもいい。 ただ、なぜあげはさんがココに連れて来たのか謎なわけであって… ど…どうすれば? 「ハイ、どうぞ」 頭を抱えたい衝動に駆られていると、目の前にアイスコーヒーが。
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