living.8

9/12
前へ
/165ページ
次へ
「大丈夫、終わったら月海ちゃんが迎えに来てくれるし」 そこはダンナさんが来るんじゃないんだ。 なんて、初めて会ったヒトにつっこむことはできず。 「相変わらずジャンケン弱いのね、藍河」 「一回でも月海に勝てたらつけ上がるでしょ」 他人にボロクソに言われる七夕さんのダンナっていったい…? なおもワイワイと何か言っているニ人を、七夕さんはニコニコと黙って見ているだけ。 自分のダンナがそんなことを言われていても気にしないらしい。 というか普通、奥さんの前でダンナの悪口って言わないと思うけど。 「いるだけで邪魔」 思い出したのか、また俺に鋭い視線を向けてくる。 「いるだけって!あげはさん、俺の扱いひどくない?」 ホントに邪魔者扱い。 抗議の声を上げるけど、グッと胸倉を捕まれて。 「用もないのにヒトの職場に来て邪魔以外に何が?」 「はい、ごめんなさい、すぐに帰ります」 女のヒトに胸倉掴まれるなんてドラマでもやったことない。 こんな貴重な経験はいらないんだけど。 しかも後ろにいるニ人は助けようともしてくれないし。 ってことは、コレってあげはさんの標準? イヤイヤ、コレが標準だとしたら、この先どうしたらいいんだよ。 「お夕飯は?」 そのままの状態で言われるから全く思考が追いつかない。 なんで凄まれながら夕飯のことを聞かれなきゃいけないんだろう。 イヤ、あげはさんが作ってくれなきゃ、自炊なんかしないからナシになるんだけれども。 仕事のあとは同窓会あるから、ホントは作りたくないだろうけど。 「えぇっと…オムライス?」 急には思い浮かばなくて、今朝テレビでやっていた絶品オムライスとかいうのを思い出した。 「なんで疑問?」 なのに微妙な顔をされる。 え、ダメ?
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1066人が本棚に入れています
本棚に追加