living.9

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「いただきます」 「はい、どうぞ」 「ぅんまい」 一口しか食べてないですけど。 雷って、ご飯食べてる時だけ正直な気がするな。 「あ、そうだ、明日昼から地方に行くことになって、帰ってくるのたぶん三日後」 予定がわかっていればこうやって前以って言ってくれる。 まぁ、あたしもお夕飯のこととか考えるのラクだけど。 「ごめんね?」 お礼とか謝罪とか、この間からいっぱい聞く。 なんでなんだろう? 今なんてご飯食べてるのに、すっごい申し訳なさそうな顔して。 こっちが食べる手を止めてしまう。 「……ねぇ、聞くつもりいっさいなかったんだけど、なんで謝るの?なんか悪いことでもしてるわけ?」 いつもいつも謝られたら、誰だってそう思うよね。 聞く気なんてホントになかったけど、毎日言われるとさすがに。 「あげはさんが同窓会行った時、たった数時間だけ一人でここにいて寂しかったんだ」 「寂しかったの?」 実はあたし、そんな風に思わないようにしてた。 思ったところでいつ帰るかわからないヒトにそんなこと言えるわけもなく。 不規則な仕事してるんだし。 だから、最初から一人で暮らしてるんだと思うようにしてて。 雷はたまに遊びに来るヒト、みたいな? そりゃ確かにちょっとは寂しいなぁって、思うこともあったけど。 慣れ、よね。 「せっかく一緒に住んでるのに、あんな時間イヤだなって思っちゃったから」 食べる手を止めて真っ直ぐ見てくる。 その真剣な表情は、たぶんホント。 あまり見せない雷の、ホンネの部分。 ソレを見せてくれるのは、正直嬉しいかもしれない。 ずっと、ホンネなんて隠してこの先も生活していくものだと思ってた。
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