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「――だから少年よ、何度言わせるんだ。……私は十年前にお前達に呼び出された狐狗狸(こっくり)だ」
なぜなのか? 家に帰り玄関を開けたら、腰に手を当てツンと胸を反らした少女が立っていたのだ。
もちろん全く面識がない。
お手伝いさんなんて、雇ったっけ? ――いやいや、そんな金銭的な余裕が自分にあるはずがなかった。
去年事故で両親を亡くし、保険金と僅かばかりの遺産で生計を立てている――こんな一介の貧乏男子高校生に、そんな贅沢ができるはずがないのだ。
ではなぜ学校が終わって、一人暮らしの狭いアパートに帰ってきたら見知らぬ少女が家にいるのか?
少女は、スラリとしたスタイルに、さらさらとしたライトブラウンの髪を腰の辺りまで伸ばし、ブラックのシャツとフリフリ付いたミニスカート、それにホワイトのエプロンを着けている。
真っ白できめ細やかな肌に、少し目尻が上がった切れ長で涼しげな目元。
凛とした顔立ちは美しくもどこか儚げで、高貴でさえあるのだけれど――頭にホワイトブリムを着けているので、どうやってもお手伝いさんかメイドにしか見えなかった。
いや待て……こっくり? ――聞いた事がない。
「すまない。……意味がわからない。何かの勧誘なら、出て行ってくれないか? ……じゃないと、今すぐ不法侵入で通報する事になるぞ?」
「通報? ……ああ警察を呼ぶのか。……まあいいさ、呼びたきゃ呼べばいい。だがな――」
――少年よ、これで呼んで、誰が捕まるんだ?
そう言葉を残すと、狐狗狸と名乗る少女はパッと目の前から姿を消し、その場に白い――
「な、何だ――っ? ね、猫?」
真っ白な毛並みが美しい、ネコ程のサイズの小動物に変じていた。
尾が三本に割れて気持ち良さそうに空中をユラユラと漂っている
むむむ……これは悪い夢を見ているのか――少年は自分の頬を思いっきり叩いてみる。
バシッ――うが、いってーっ!
「一体、何がどうして……どうなって……あわわわ――コリャ、えらい事だ……」
もう訳がわからず、取り乱しまくっていると、目の前の猫のような動物は、またパッと姿を消すと、今度はボンッと少女の姿に戻った。
腕を組んでまたも不遜な態度で見下ろしてくる。
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