欠点

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「なかなか難しいね。他人に普通に好かれる、ということは」  色素が薄いしなやかな髪に、陶磁器のような肌。長く上向きに伸びた睫毛。薔薇色の唇。普通には好かれないが、異常に好かれることは多々あるようだ。 「そもそも、欠点というのはマイナスの要素だよね」 「まあ、そうだね」  欠点を「設定」することにした、と彼女が言い出したのは、高校の入学式の前日のことだった。  ファンやストーカーは、もういらない。 君以外にも、普通に接してくれる友人がほしい、と。  欠点が人を適度に魅力的に見せる、というのは確かにある話だと思った。しかしあえてつくらずとも、彼女に欠点のあることを僕は知っていたが、それについては黙っていた。 「かわいいはつくれても、欠点はつくれないのか……」  欠点をつくる方が、何となくあざとい気がするな、と思ったが。それも言わなかった。
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