秘密

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 それより、と僕は彼女に言った。 「学校で、僕に話しかけるのやめたら?」  普通の友人をつくるなら、それがいちばんだと僕は思う。 「……どうして?」  全く分かっていない。この鈍さこそが、彼女の欠点だった。  僕の実家は、いわゆる堅気の家ではない。怖い顔をした男たちが頻繁に出入りしていて、祖父は指こそ五本揃っているものの、昔刃傷沙汰になったときの傷跡が、今も肩に残っていた。  地元ではそれなりに有名な家なので、僕と仲良くする強者は少なく、そのうちのひとりが彼女だった。 「どうして、って……」  むしろ、なぜ分からないのだろう。頭はいいが、そうしたことには恐ろしく鈍い。
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