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「いいか、命令は3つ」
アラガミに喰い荒らされ、穴の空いたビルが建ち並び、その街の中心には何故か教会らしきものがあったことが窺える。
かつては栄えていたであろうその街───エリア名、贖罪の街。
そこで、フェンリル極東支部第一部隊隊長の雨宮リンドウは新人2人に、命令を下していた。
「死ぬな。
死にそうになったら逃げろ。
そんで、隠れろ。
運が良ければ不意をついてぶっ殺せ」
そこまで言った所でリンドウは真面目な表情を崩し、おどけてみせる。
「あ、これじゃ4つか?
ま、とにかく生きのびろ。
それさえ守れば、あとは万事どうにでもなる」
戦場に向かう者に対して、死ぬなと命令を下す上官はどうかと思う者もいるかも知れない。
しかし今の世の中、神機使いは必要不可欠。
容易く死ぬのはそうそう許される事ではない。
「さーて、おっ始めるか!」
リンドウは肩に神機を担ぎ、5m程の道の下に降りた。
「……行こうか」
新人の1人……黒髪の少年が赤毛の少年に呼びかけた。
「……そうだね。
華麗なる伝説の幕開けだ!」
赤毛の少年は自らを奮い立たせるようにそう言うと、リンドウの後を追う。
「今回の目標はオウガテイル3匹だ。
俺はサポートに徹するから、お前ら2人でなんとかやってみろ」
「……了解」
「わかったよ」
新人2人は無理とは言わず、視界に映る怪物を見やる。
オウガテイルはティラノサウルスを小さくして、尾を大きくしたようなアラガミだ。
その尾からは人を貫けるレベルの針が飛び出したり、振り回したりと、それなりに危険なものとなっている。
「俺が突っ込むから、お前はサポートを頼む」
黒髪の少年は赤毛の少年に言う。
それは各々の神機の性質から下された提案だった。
黒髪の少年の得物はロングブレードで、赤毛の少年の得物はブラスト。
剣と銃ならば、剣が突っ込み、銃が後方支援するのが定石だ。
「わかった。援護は任せてくれたまえ」
赤毛の少年は了解し、作戦は開始された。
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