第2話

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それから数分後、タクシーが停まったのは 視界に入りきらない程、 見上げても見上げきれない程に 大きなホテル。 藤堂さんに背中を押され、中に入れば それはそれは立派なホテルのロビー。 20歳そこそこのあたしなんかが そうそう立ち入るような 場所ではないのは確かだ。 そして、さすがオーナーだけあって、 ホテルマンや従業員達は 藤堂さんの存在に気付くと 深々と頭を下げている。 容姿だって格好いい藤堂さん。 そりゃあ女性従業員がときめくのも わからないわけではない。 頬を赤く染めて彼を見つめる彼女達は 藤堂オーナーの隣を歩くあたしを どう、思って見ているんだろう。 …………彼女? いや、それはないな。 だいたい、藤堂さんって女性と 遊ぶような人には見えないし‥ きっとそれは、周りだって、 同じ事、思ってるはず。 でも‥‥‥‥ “藤堂さんに似合う大人女子になりたい” 今、そう思ってしまった そしてあたしは、 彼の腕に絡みつきながら歩く。 そっと彼を見上げれば、 あたしを見おろしながら照れたように ふわっと笑ってくれる、 その仕草にまた、あたしの腹の底からは 何かが沸々と湧きあがってくるのが わかった。
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