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 マリエは笑い出した。 「若い娘っていうのは勘違い。子供だね。まったく。およしよ、みっともない。シビリアンポリスなんてやってるからかねぇ。がさつな子に育っちゃって」  マリエはため息をついた。 「何かまずい?」 「そうさね。その年で変に女を意識するより、どっちだか分からない方がマシかね」 「ひどい言われようなんじゃない」  アルテミスの憮然とした声に、マリエは再び笑った。 「すまないね。朝から年寄りに付きあわせて。お詫びにサンドイッチをあげるから持っていきな」 「やった!」  アルテミスは狙撃されたことを忘れることにした。 「色気より食い気かい。まったくねぇ」  マリエは首を振りながら店の中に入った。  マリエからサンドイッチと缶コーヒーを受け取ったアルテミスは、Dパックを下ろしてカバーを開けた。両脇に五センチほど閉じられた場所がある。大きさのわりに収納スペースがなかった。  Dパックの覗き込んでいたマリエが、意外というように感心した。 「へぇ、きちんと整理しているんだね。私はもっとごちゃごちゃに詰め込んでいるものと思ってたよ」 「誰かさんの教えがいいから」 「そりゃあ、そうさ。若い頃からきちんと整理できない人間は、年を取ってから乱れた人生を送るもんだ」  マリエはしかめっ面で言ってから、心配そうな声で付け加えた。 「それにしても、武器の一つも持ち歩かないとは無用心だね。じいさんが使ってたレールガンでも貸してやろうか」  アルテミスは苦笑した。答えようとして、口を閉ざし、頭の中で言葉を選んだ。マリエが二年前に亡くなった夫を尊敬していることをアルテミスは知っている。二世代前の武器は今では骨董品でしかなかったが、それを言って気を悪くさせるつもりはなかった。 「このDパックはなかなかのものよ」  マリエは疑わしそうにDパックを見つめた。 「ギルベストの手作りかね。あんたのたった一人の身内を悪く言うつもりはないけど。信用していいもんかね。あの変人科学者を」 「腕は確かよ」 「それはそうだけど」  バスが近づいてきた。車道と歩道を分けているガードフェンスが開く。アルテミスはDパックを背負った。 「じゃ、行ってくるね」 「ああ、しっかり勉強しておいで」  浮上制限内で二台のエアバイクがバスを追い越していった。
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