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レイネが嬉しそうに言った。
「良かった! お仕事の話のあとで会えるのね! 部屋で待ってるわ」
アルテミスはレイネの声を聞き、肩を落とした。
「ま、仕方がないな。ご招待じゃ、ね。学校は……」
ヒューは小さな声で伝えた。
「休校だな」
笑いをかみ殺しているヒューをアルテミスは恨めしそうに見上げて左右に頭を振った。オレンジ色の髪が揺れる様子をヒューは面白そうに見ていた。しばらく黙っていたヒューがアルテミスに伝えた。
「ポリスセンターから許可を貰った」
「そんな素振りは見えなかったけど」
「通信装置を内蔵しているのは、おまえだけじゃない」
「そりゃそうだね」
「緊急の仕事と学校に連絡しておくと言っていたよ。諦めろ」
「ああ…… レイネの部屋に行くまで付き合うよ」
アルテミスの言葉にレイネが微笑んだ。レイネはおずおずとヒューの背をつついた。ヒューが振り返った。
「なんでしょう?」
「あのね…… また、アルテミスと一緒に行ってもいい?」
ヒューはアルテミスを見た。
「アタシは構わないよ」
ヒューは再び声をひそめた。
「そう…… 幾ら最果ての星でも、一日に何回も狙撃されるヤツはいないだろうな」
アルテミスが目を細めた。
「アタシを張ってた?」
「カツラギが会いたがっている重要人物だからな」
アルテミスは鼻で笑って、アウターボーンを装着した。横目で見ていたリッチーが口笛を吹いた。
「隊長には聞いていたが…… 操作した様子も見えなかった」
「隊長?」
アルテミスが見上げると、ヒューが照れたような笑みを浮かべた。
アルテミスは少し離れたリッチーに聞こえるように声を大きくした。
「あんたが考えるような操作はないんだ。脳細胞にパターンをプリントしたニューロンスイッチがある。それで操作する。訓練でスイッチを切り替えられるようになるんだけど、次第に切り替えるという意識はなくなって、思えば自然に切り替わるようになる。分かる?」
ヒューとリッチーが顔を見合わせた。
「分かったか?」
「いえ、ぜんぜん」
諦めた様子でヒューが答えた。
「話には聞いていたが。よく分からないな」
「説明してるアタシも、さ。この感じを伝えるのは難しい。サイボーグの食欲をうまく説明できる?」
「なるほど。なってみないと分からない、ということか」
「そういうこと」
アルテミスはすました声で言った。
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