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アルテミスたちはアッパータウンからロアータウンまで伸びている四本の幹線のうちの一本を上がっていった。雑然としたロアータウンの風景は次第に消え、ミドルタウンの整然とした風景に変わっていく。さらに行くと木立が増え、それと共に敷地の広い瀟洒な屋敷が増えていった。
アッパータウン12Bは高級住宅街の中心だった。アルテミスが速度を緩めると、エアバイクが追い越した。エアバイクが止まったゲートの前で、アルテミスも止まった。
「着いたよ」
アルテミスは少し考えてから言った。
「もう一度アタシの足元を見て」
レイネが体を動かし、アルテミスの足元を覗いた。アルテミスがアウターボーンを解除すると、銀色の装着物が消えた。レイネは目を輝かせてアルテミスを見上げた。
「すごい! 魔法みたい」
アルテミスは微笑んだ。
「そんなたいしたしたことじゃないんだけどね。昨日も思ったけど、この家の方が凄いよ」
「なにが?」
レイネは不思議そうに聞き返した。
「庭付き一戸建てはミドルタウンにもあるけどさ。この辺のは庭っていうより、公園みたいな広さだ」
エアバイクからヒューが降りた。
守衛室の前にエアバイクを停めたリッチーが同じように顔の一部にメタリックの肌を残した二人のガードに声をかけていた。二人は濃いグレーの制服を身につけ、アルテミスのスタン警棒がおもちゃに見える大出力のショックガンを腰のホルスターに入れていた。
一般市民にシビリアンポリスが持つ武器以上の強力な武器の所持は認められていない。
「堂々と見せているってことは、許可は取れてるってわけか」
アルテミスの声が聞こえたのか、ヒューがわずかに口元を緩ませた。アルテミスが前日のようにレイネをヒューに渡そうとしたが、ヒューは手を出さなかった。
「少し待っていろ。リッチーが来るから」
リッチーが椅子を持ってきて、アルテミスの前に置いた。座り心地の良さそうな椅子で、両側の肘掛けに操作パネルが付いていた、周囲を半透明のカバーが覆い、四本の脚に稼動部分はなく、底がドーム状になっていた。
「椅子に下ろして」
レイネに言われ、アルテミスは抱えていたレイネをそっと椅子に移した。
レイネがパネルに手を当てた。椅子は音もなく浮かび上がった。
「ようやく驚かせることができた」
アルテミスの表情に、レイネは満足そうに笑った。
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