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 緊張しながら、ヒューと共にゲートの内側に入った。 「カツラギ邸にようこそ」  ヒューが軽く会釈をした。  敷地には木々が植えられ、庭に花が咲いている。池のほとりには小型艇の発着ポートがあった。 「宙港から小型艇をチャーターするとか、ハイウェイを通れば安全だっただろう。なぜ、そうしなかった」 「カツラギには敵が多い。ご自身は宙港からここに来たが、お嬢様は安全のために自分とは別の、一般道の経路を使った」 「ロアータウンを通る方が危ないと思うけどね」 「確かにどっちも危険に変わりはない。要は一緒にいないということが大切だったのさ」 「まさか孫をおとりに」 「それほど非道な人じゃない」  ヒューはすぐに否定した。 「ご両親は?」 「火星移民船のエンジン事故で亡くなられている。それもあって、カツラギ氏は安全なエンジン開発に人生を捧げた」 「そうだったのか」  アルテミスはレイネの顔を思い浮かべた。レイネの前ではカツラギのことを悪く言わないようにしようと決めた。 「エンジンの開発って、これほど儲かるんだ。こんな屋敷に住むには、あくどく稼ぐしかないと思うけど」  ヒューが呆れたという様子でアルテミスを見た。 「調べていないのか」 「何を」 「カツラギ氏や俺たちのことさ」 「調べたよ。照合なし。あんたやレイネも。三人とも、ティタニアには存在しない人間だ」  ヒューは笑った。 「若いな。正直すぎる」 「シビリアンポリスがクラッキングするわけにいかないもんでね」 「そうカリカリするな。本当に知らないのか」  ヒューは呆れたように言い、足を止めた。 「カツラギコンツェルンの総帥、と言っても分からないか。歪曲場理論の発見者でワープエンジンの開発者、太陽系を飛ぶ全ワープエンジンの製造元であるインターナショナル・クリエイティブ・インダストリーの社長だ」 「ICEの社長! それだったら、分かりやすい」  アルテミスは短く口笛を吹いた。そして、不審そうにヒューを見上げた。 「それにしてはアンタはカツラギを敬っていないね。雇い主でもあるのに」 「そうか?」 「レイネにはカツラギ様と言うけど、アタシと話す時は呼びすてにしてるもん」 「そうだな…… まぁ、オレとカツラギは戦友みたいなものだからな。それぞれ敬ってはいるが、上下の関係はない」  ヒューの声にはアルテミスが触れられない重みがあった。
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