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 ウィードはラベルのいらだった表情に一瞬笑みを浮かべそうになった。それを気取られないように慌ててうなずいた。 「そうだ。あの娘、アルテミス・ヌールだ。学校では常に一緒にいる」 「ユラナスの都市管理局も大したことがないな。狙撃にも失敗して子供一人連れてこれないとは」  ラベルの揶揄に、ウィードは舌打ちした。 「我々はこの都市を管理する者だ。犯罪者ではない」 「聞いておこう。だが、ここまで手を染めた以上、あなたがたにもできるだけのことは全てやってもらう」  ラベルは鷹揚に言った。 「私、いや、地球の資源局はICEの開発したエンジンの秘密は、カツラギの孫、レイネにあると考えている」  ウィードがまじまじとラベルを見つめた。 「正気か?」  ラベルは右手を伸ばし、細い人差し指で灰皿の葉巻をつついた; 「今の発言は聞かなかったことにしよう」 「いや…… 申し訳ない。しかし…… あの娘が超天才だとでも?」 「私も全てを知っているわけではないのだよ。私の上は何か気づいたことがあるのだろう」  ラベルがソファに背を預けた。ウィードは苦々しげに言った。 「それだったら、こんな辺境で誘拐などせず、テラなりマーズなりでどうにかしたらいいじゃないか」 「カツラギの経歴を知っているだろう。あの男はテラにとっては厄介者でありながら英雄でもある。ジュピターでは絶大な力があるし、マーズやサターンにも影響力がある。ここユラナスでも力はあるだろうが、ほかの場所ほどではない。手を出すとしたら、ここで出すしかないわけだ」 「だが、あんなゴタゴタを続けられないぞ。幾ら我々でも情報を握りつぶせる限度はある」 「ま、しばらくの辛抱だよ」 「BBでさえ通用しない相手に、どうする気だ」  ラベルは薄い唇をわずかにゆがめた。 「確かに甘く見ていた。だが、前回のBBは旧式な上に偵察用だ。捨てるつもりで使った。最新型の攻撃用BBにとって、ジュピトリアン・サイボーグやアウターボーンなど敵ではない」 「そうだといいがな」  出会う以前、ウィードはかなりの時間をラベルとに通信に費やしていた。その時には気がつかなかったが、実際に会うと地球生まれを鼻にかけた尊大な男だった。ウィードは味方とはいえ、ラベルに会うことが苦痛なほど嫌いになっていた。  それでも、地球での生活と贅沢に暮らせる金のことを考えれば我慢ができた。
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