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ウィードはラベルに忠告した。
「自慢ではないが…… アウターボーン・システムを甘く見るな。アルテミスの最小形態で、あれだからな」
「それも聞いておこう」
ラベルは再び気のなさそうな声で答えた。
インターナショナル・クリエイティブ・インダストリー、ICEは葛城竜一が創設した企業だった。カツラギは自らが発見した歪曲場理論からワープエンジンを開発した。ワープエンジンの製造はICEだけで行われ、今では太陽系の移動はカツラギの許可なしでは行えないとまで言われていた。
アルテミスは屋敷に入る前にヒューに聞いた。
「エンジンはブラックボックスなんだってね」
「よく知っているな。事故では壊れないくらい頑丈に作られているが、分解すると爆発する」
ヒューはニヤリと笑った。
「という噂がある」
「汚い商売だ。宇宙は一人のものじゃない」
「そういう考えは嫌いじゃないがね。占有しているから儲かるんだ。それに、だ。宇宙は一人のものじゃないが、そのためにお嬢様を襲っていいわけなどない」
「そりゃあ、そうだけど」
アルテミスは答えながら、細い首をかしげた。
「やっぱり、レイネを襲った理由は企業テロかな」
「どうかな。あの爆発はおかしい。脅して設計図なり、金なりを要求するとして、お嬢様を吹き飛ばしては意味がない」
「そうだね」
アルテミスは考え込んだ。
「テラの旧式な偵察ロボットが乗っていたんだけど、聞いてる?」
「いや、その情報はない」
ヒューが即答した。アルテミスは疑わしそうにヒューを見た。
「BBって言うんだけど。アタシがいなくても、あんただったら仕留めてたかもね」
「かも、じゃない。BBだったら俺の内蔵装備で破壊できる」
「内蔵装備?」
ヒューが黙って右腕の袖をまくった。突き出された腕が割れ、銃身が現れた。
「なに? それ?」
「レールガン、のようなもの。これで大戦の頃に数え切れないくらい破壊した」
ライフルの銃身が戻り、腕が閉じた。
「ここにいるほかの連中もそうさ。今は相手を殺さないようにショックガンなんていうおもちゃを持たせているが」
アルテミスはヒューをにらんだ。
「ポリスセンターには申告したの?」
「何を?」
「あんたたちの内蔵装備。武器持込条項に違反してるよ」
「体の一部だからな。大目に見てくれたようだ」
ヒューの答えに、アルテミスは満足しなかった。
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