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広い部屋の中央より先に透明なカーテンがかけられていた。その手前にフロートチェアが置かれていた。
「あれ? あの子、立ってる?」
アルテミスは思わず声を上げた。アルテミスの声を聞き。ミリが説明した。
「カーテンの先は低重力室になっています。0.3Gですので気をつけてください。ご不安でしたら低重力室用シューズをご用意いたします」
「ありがとう。低重力訓練は受けているから大丈夫だと思う」
「かしこまりました」
ミリはドアを閉めた。
アルテミスは部屋を見渡した。
『一等地の広い部屋ってだけじゃなく、この部屋も戦艦一隻分の金がかっているんだろうな』
そう考えながら、アルテミスはカーテンに近づいた。
「入っていい?」
「待ってたの。どうぞ」
レイネの返事を聞き、アルテミスはカーテンの内側に入った。途端に体が軽くなった。アルテミスは足の裏を床にこすりつけるように動かし、滑るようにレイネのそばに移動した。
「驚かされてばっかりだね。ここにもアンチグラヴィトロンがあるんだ」
「ごめんなさい。このくらいの重力でなら体を支えられるんだけど、1Gだと無理なの」
「気にしなくてもいいよ」
「本当にごめんなさい」
「いいさ。腰掛けて話そうよ」
不安そうにアルテミスを見ているレイネの手をとってベッドの横に連れて行き、並んで腰かけた。
アルテミスを見つめていたレイネが心配そうに言った。
「顔色が悪いわ。ドクターを呼びましょうか」
「いや、原因は分かってるから心配ない。すぐ直るよ」
「おじい様が無理を言ったのね」
「いや、そうでもないんだけど」
心配そうなレイネの表情に、アルテミスは慌てた。
「なんでもないことなんだよね。来週からカツラギさんと一緒に学校へ通うって話なんだ」
レイネの顔が一瞬で輝いた。
「おじい様がそうしてくれたの! 頼んでよかった。それが心配なこと?」
レイネは嬉しそうに笑った。無邪気で穏やかなレイネの笑顔を見ているうちに、アルテミスはショックが薄らいでいくのを感じた。
「そうでもないかな」
「私と一緒に学校に通うのはイヤ?」
「カツラギさんと通うのはイヤじゃないさ」
「よかった。これからは同級生ね。わたしもレイネでいいわよ」
レイネの表情が一段と輝いた。
『頼られるっていうのは悪くはないかも』
アルテミスは護衛を引き受けて良かったと考えることにした。
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