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 アルテミスの両目に様々な色分けされた情報がオーバーラップし始めた。アルテミスが視認すると、確認されたデータは奥に消えていった。 「半径二十メートル内に武器によるエネルギー反応、爆発物反応、なし」  データが表示された。 「襲った連中は死んでる? 生存者確認。一名生存。さすが高級車…… 見たことない車両だな。車両照合。へぇ、ジュピトリアンの特殊装甲車か。ジュピター製だけあって、凄い耐久性だ。あの爆発でドアの外装が吹っ飛んだだけ。この辺の一般車だったら、跡形も無かったかも。」  アルテミスは状況を声に出していた。その声はサブメモリに記録される。もし、アルテミスに何かあれば、サブチップを回収した誰かがそれを聞くはずだった。誰が聞くのか一瞬考え、アルテミスは顔をしかめた。  少なくとも、それは自分ではない。  アルテミスはチョークバッグからスタン警棒を取り出した。手元のセーフティレバーをひねる。ショックガンとして使用可能となったことを知らせる警告音が短く二回鳴った。  めったに見かけないジュピターのエアカーという情報に、アルテミスは気を引き締めた。それでも、生存者が一人しかいないこともあり、装備のレベルは上げなかった。  周囲に目を配りながら、アルテミスはエアカーに近づいた。爆発は激しいものだったようで、特殊装甲にも関わらず、運転手側のドア部分が潰れていた。周囲を素早く見る。交差点付近のビルにも被害があった。窓ガラスが割れたり、壁が剥がれたりしている。  生存者の確認を後回しにして、アルテミスは炎上している違法改造車に近づいた。軽くジャンプして、屋根の端に立った。 「こっちはティタニアの一般スポーツタイプか。だけど、緊急停止信号を無視したところを見ると、違法改造車されている。どこの誰が、こんなことするかな?」  内部で爆発が生じたらしく、両側のドアが吹き飛んでいた。アルテミスが中を見ていると、損傷の激しい運転席で何か動くものが目に入った。黒焦げのシートの上で、黒い塊が数本の手足を動かしていた。 「なんだ?」  アルテミスの背に冷たいものが流れた。瞳の中に生存反応はなかった。  平たい黒い物体が運転パネルに二本の腕を食い込ませ、立ち上がろうとした。一メートルもない大きさで、先に出された腕のほかに、左右に三本ずつ手、あるいは足があった。
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